歯医者嫌いのあるメンバーは虫歯があることを知りながら、すでに数年歯医者に行っていない。
「おじちゃん!そろそろ行きなよ!なんでそんなに嫌なの?入れ歯になっちゃうよ?!」
芍薬先生がいつものごとく世話を焼く。
「まだ痛くないから大丈夫だって。虫歯くらいじゃ死なねえから」
MT公会堂はそういう人が多い。「死にはしないから」と言えば、もう仕方ないなあと話が終わってくれると期待してる人が多い。
「今は麻酔あるから痛くないって。」
「わかってるんだけどな。あと仕事だ。トラックに乗れなくなる。酔っ払っちゃうから車の運転できねえんだよ、麻酔すると。それで飲酒運転一発で切符切られちゃかなわねえ」
口をつぐんでいるのは元LAY-RONを名乗っていたひとりの青年だった。事情を知っている頌栄と頌栄の表情をみて目つきが変わる芍薬先生。芍薬先生はとにかく感覚が鋭く、向こう様のおつきのものに「知覚過敏のバイキン」というあだ名を賜ったほどだから、芍薬先生の目つきの変化に私たちも何かあるのだと期待した。
頌栄は後日、芍薬先生に事情を話し、芍薬先生が私に話してくれた。
私の子どもたちは私と主人の養子であるが、日本国籍もあるし、健康保険証もきちんと交付されている。貧しいから塾通いもさせてやれないし、スマートフォンも自分でアルバイトをして買いなさいと言っている。
驚いたことに、この国には国籍がありながらも健康保険証を持てない人間がいるのだそうだ。彼は会社所属の、お抱えの闇医者の病院に行くしかない。安く済む、頼る病院がそこしかないからだ。それなのに、、、多量の麻酔を注射されて酩酊状態にされてしまい、事故を起こした。大事故だったらしい。
この彼というのが元LAY-RONのメンバーだったのだ。
To be continued by 消息からのあらすじEpi2-2 日雇いと赤線の歴史
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