落ち着こうぜっていうけど椿が一番落ち着いてないんだよ。
私は落ち着いている。いつも冷静だ。
JERUSALEMに女の噂があると私は傷つきやすくなる、それだけのことだ。
元取締役に植え付けられたトラウマが今もなお私を苦しめる。
「お前はさあ、なんでブスにばかりストーキングされんだよ!女優やモデルになんでストーキングされないんだよ!!!それで私が好きとか喧嘩売ってんのか?!」
本気の怒りを久しぶりに再会した元取締役にぶつけてみた。
これは偽りなく本気の怒りだった。
相変わらずにへらにへらしているだけで反応がしどろもどろ、
「いや、あの、、俺の、せいじゃなくて、あの、なんていうか、、、へへへ、椿ちゃん、げ、元気だった?」
私は元取締役と相性が悪い。悪すぎて過去何度この男に嫌な目にあわされたかわからない。
決まってブスが彼のストーキングをして、なぜか私がいじめられる。過去3度、別の女性に。その構図をずっと見ていたJERUSALEMが横からかっさらう形になって元取締役がヒステリーを起こしたのが今年の私の誕生日から3月までの話だった。
そのことも急に思い出して怒りも思い出して、
「お前がまごまごしてるからJERUSALEMが男気見せて私のこと助けてくれただけなのにさ、なんでJERUSALEMたちがお前に文句言われんだよ!!それもおかしいだろう!!」
元取締役はまたにへらにへらと笑いながら、もごもごと
「だってさ、だって、俺と椿ちゃんからはじまったのに、えへ、えへへ、いや違うんだって、、あれ?椿ちゃん、今日生理?ちょっと肌荒れしてない?」
、、、気持ち悪い。
「ブスは断れ!美人ならキープもありだろうけどよ、選べよ!!」
私はブスのストーカーのせいでいまだにJEUSALEMが女性と仕事をしているだけで気持ちが落ち込んでしまう時がある。
「お前のせいだ!!」
ヒステリックに私が叫ぶとJERUSALEMが半ばはがいじめにして止めに入る。
「まあ、ほら、椿はお前のこと好きだったんだよ」
献灯が私を抱きしめながら口添えをしてくれる。
「過去形にすんなよ!!だいたい、2019年の初見から感じ悪かったんだよ、チンピラ風情が!」
態度が違う、あからさまに元気のいい元取締役に私は再度腹が立って、
「それだけ言う元気あるなら、ストーカーにもはっきり言えよ、カス!!ぶん殴られてえのか!!」
顔を真っ赤にして睨んだものの、元取締役の顔があまりにもふにゃけていてもう呆れて言葉を失った。
わかっている。あいつは私を目の前にすると他のことに目が行かなくなるから、毎度ストーカーに期待を持たせてしまうことを。
くどくどとそんなことをベッドで言い続けていると祈祷が「次の休みにプラネタリウム行こう」と話をそらしてくれる。
祈祷との出会いも実際は2019年だった。同じことを感じて自分以上にその感覚を言葉に出来る私に惹かれたそうだ。
「ふたりで行こうよ。まだデートで行ったことないじゃん。元取締役とも行けなかったんでしょう?だから俺と行こう」
祈祷はいい。星の話が合う。空を見て思いを馳せる感覚が似ている。趣味が同じだ。それに何より大人だ。落ち着いた声で私に子守唄をいつも歌ってくれる。最近寝つきがいい。祈祷が歌を歌ってくれるからだと思う。
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