私の頭上には星が煌めいている。私の頭上には真っ青な空が広がっている。
空が綺麗だった。空気が気持ちよくて、花もきれいだった。
でも外には出れない日々が続いた。私の心を食ってやると、野犬がうろついている。今もまだ変わらない。野犬は群れをなし、子をなし、利権のために私の息の根を止めようとうろついている。
頭上の星を追いかけて海へ行ってピクニックがしたかったのに。
頭上の真っ青な空が海に繋がっている街に住んでいるのに。
家の外には野犬が群れをなして私を食い殺そうとしている。
私が何をしたというのだろう。私はただ、小説を書いていただけなのに。
その日々の糧さえも奪い取られた。これは最初から俺のものだったと見下された。
私はいったい何者だったのか。この数年に面と向かって会話をした人はたった5人。父は死んだ、元夫とは別れた、友人とは疎遠で、母とは絶縁した。
孤独のうちに正しさを求めて生きてきた。正しさに準じて生きてきた。
野犬は元々飼い犬だった。あまりのしつけの悪さに野放しにされ、人様の家の食卓を荒らすようになった。野犬に入られないように家庭ごとにセキュリティを強化したから、収入格差によって命に値段がついたのだと思う。
私の家に侵入することはできなかったはずだ。なぜなら私の家はそこにはない虚像の産物だったからだ。しかし私の家にはうまそうなご馳走がいくつも並んでいた。
虚像も一歩現実に飛び出せば実像になる。レンズのトリックだということを互いに理解していたから、家の前で野犬はいつも待ち構えている。
私は時々、家から出られなくなる。今もなお。
明るくはない、喜びのうちに生きていない。こんなふうに私は野犬の幻影に食い殺されている。今もなお。
野蛮な野犬が今日も私を食い殺した。流れる血潮は酸化して黒くなっている。同じ箇所から鮮血が噴き出すから瘡蓋になって厚ぼったくなっていく。
胸に刺しているのは薔薇の花ではない。心臓から流れ出た私の血潮だ。花びらのように重なりこびりついている。
私の憎しみと悲しみが頭痛を招いている。あなたの頭痛は私の憎しみ。
リフレインする悲鳴は彼日の私の泣き声。
そう感じたらあなたのうちに後ろめたいことがあるということ。
人は自分のやましさから逃げ切ることはできない。なぜなら生まれてから今の今まで同じ海馬、同じシナプスで生きていくのだから。
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