過不足を補うように息をする。私が吸えば彼が吐き出して、彼が吐き出せば私が一滴も漏らさないようにと吸い込む。
スマートフォンから音楽を漏らしている。漏れた音楽で頭をおおうようにして眠る、ひとりの夜は。
耐えられない。泣けば泣くほど彼が夢で抱いてくれる。リアルで抱かれるよりも陶酔できる。彼との正気のsexがオナニーだなんて言えない。言えば煽れる。だけど、彼は2度と私をひとりにしてはくれないだろうから。
甘い声が拙い声が優しい声が煙にまみれて私の下腹部の蛇を這わせる。世間に出してはいけないと彼は嫌がるかと思ったけれど、私の蛇を見たいと教えてくれた。
蛇の正体は腹の底に眠る女である理由だ。子宮でも卵巣でもない、収縮するその圧迫性だろう。
「君の本質はなんだろう」と不思議そうに私の目を見つめる。目を逸らすと嬉しそうに下にまわりこんで、キスを繰り返す。絶対に逃してはくれない。好きだったそのひとつひとつの行動が私の蛇を目覚めさせる。
指輪を外した。過去の恋への決着ではない。そんなことを思われること自体彼の美しさを損なうと思っている。過去が彼を高める要素だなんてとんでもないことだ。彼はいつも誰よりも気高いのだから。
指輪を外した理由はついに私の腹の蛇を世間が認めたからだった。
蛇という象徴を鳩の冠とする。
羊という嘲笑を狼の番とする。
勘違いを恐れて進めなかった過去とは違う。
私たちには同じ温度の同じ賜物がある。狂ってしまうほどの日々を私たちは守り抜いた。それぞれの場所で。
You can not write.
You can not make a music.
You can not have a family.
and You can not get your love.
怒りよりも震えていることがある。過去の恋愛への悪寒だ。
寒くて死にそうになる、春なのに。
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