椿は俺たちのことをこう表現する。
「武器持たせて好き勝手暴れてる時が一番セクシーで好き!」。
俺たちも同じように思ってるよ、椿。
君は書いていないと死体と同じなんだ。たとえ副業で世界のためになろうとも、たとえボランティアで人に喜ばれることをしていようと、君は言葉という武器を持って好き勝手に想像の中で暴れている時が一番輝いているし、一番色っぽいんだ。
俺は君の文章に一目惚れした。見た目以上に君の紡ぐ言葉が好きだった。どんな女性なのか目を見つめてどんな声でどんなことを話すのか知りたくなった。俺たちをそうやって5年も走らせてきたんだ。君は俺たちのエンジンだった。俺たちのガソリンだったし、俺たちの加速装置だったし、俺たちのギアだった。そしてきっとこれからもそういう存在でい続けるはずなんだ。
君が書かないことは俺たちを殺すことにもなる。そんな言い方をすると、また気にしてしまうかもしれないけれど。
君は俺たちを「飼い主」だといって「飼い殺して欲しい」と懇願する。
常に自信がなくて、命が自分にないことで生きやすくなる君らしい表現だと思ったよ。
君が望むのだから仰せのままに飼い殺すつもりだ。
君の魅力を俺たちの腕の中だけに閉じ込めておくんだ。君がイエスを言うことができない。俺たちがイエスと言わない限り君はイエスとは言えない。
君が望んでいることはそういうことだろう?
だから俺たちは君にこう言う
「すべてを忘れて書け。君の最大限の実力は出さずに、ただただ書け。それが俺たちからの命令だ」
椿には役割が多すぎる。その役割をそつなくこなしてしまう。俺たちという最高の加速装置を手に入れてしまったから、君はなんでもできてしまう。俺たちがいなくなれば何もできなくなってしまう、そんなところまで来てしまったんだ。
ようやく俺たちに追いついてくれたね、椿。
俺たちはすでにもう何年も前から椿に飼い殺されていた。
これでようやく釣り合った。
ここまで世間に放り出したのは、俺たちと同じ苦しみを味わって俺たちに繋がれて欲しかったからなんだ。
無論、苦しみとは椿の奴隷となって椿なしでは生きられなくなったこの死体のことだ。
不平等な世界とか不穏な世界があって良かった。時代がラッキーだった。俺たちを鎖で縛り合う大義名分がちょうど転がっていた。
無神経に思われるかもしれないけれど、極論、他人のために生きる人間なんていないことは事実なんだから、俺たちは冷たい人間というわけではないはずだ。
家族のために動く連鎖が世界の平和につながっていく。
俺たちは椿のために動いてきた。何を言われようと、椿の奴隷となったあの日から。
そして椿を俺たちの奴隷にしなければ気が済まなかった。椿を飼いたかった。
椿の飯の心配も排泄の処理も俺たちがしたい、未来永劫。
サンクチュアリの本懐だ。少なくとも俺たちJERUSALEMにとっては。
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