「クリスチャンってなんであんなにダセェの?」
卓さんが開口一番私を追い詰める。言葉に窮していると、マッキーが追随する。
「あいつ、名前なんだっけ?俺らよりひとつ下なだけだろ?」
「おい、やめろ!可哀想じゃないか!あの人は王子様なんだぞ!!」
悪童どもが、、、私も同じことを思ったと言葉がでかかったところで私の元カレが私の気持ちを代弁してくれた。卓さんと同じあの蠍座の彼だ。
「だから俺がめぐちゃんを救ったんだよ。卓たちはクリスチャンじゃないから何もできなかっただろう」
言うようになりやがってという目が向けられる。この子もそういう視線に怯まなくなったなあと私はどこか姉目線で視線を送っている。
思えばこの子が私と卓さんを再会させてくれたのだから。
「派手ブスとお局は俺たちも見てたんだけど、もうひとり金髪豚野郎がいたじゃん」
(マッキー、言葉を選んで、、、)
爆笑する卓さんとユウマン
(お願い、笑わないで、、、)
「一橋の法学部の子です」
私が言葉を絞り出すように言うと、蠍座の彼が悔しそうに口を真一文字にした。
「あなたが司法試験合格できなかったのはあなたのせいではなくて、あなたの生まれのせいなのだから、気にしないの」頭を撫でてやると、急に甘えてくる彼がやっぱり可愛くて、やぱり蠍座であることと涼やかな瞳は卓さんと同様ドキドキさせられると顔がにやけてしまった。
「頭が悪くても血筋と目的で裏口入学させてもらえるんだから、この世の中って頭の良し悪しなんてわかんないよなあ、、、」
ユウマンと私は同じ高校に合格している。そこそこの学歴の学校であったけれど、それでもある程度苦労して入学した自負があるから裏口入学の話は気分が悪かった。
「金髪豚野郎の護衛のイケメンもめぐみさんには敵わなかったわけじゃん。美人だからマジ惚れしたんだろうけど、、公開処刑なんてもんじゃなかったよな」
「そうそう!あれはざまあみろだった。金髪豚野郎も途中から来なくなったよね!あれは残念だった、めぐみさんと比較すると笑えたからw」
(おい、やめろ、めぐみが怒られる、、、)
「クリスチャンがダサいんじゃなくて、ダサいやつしか来れないようにしてるんだよ。教会全体で。居場所のないやつ集めて、兵隊にしてんの。ふつうに働けてる奴にはあの元締め冷たくして、排除してたんだもん」
蠍座の彼はどさくさに紛れて私の膝に膝枕をしている。卓さんの視線が厳しい。「どけ」とは言わない蠍座のプライドが私を困らせる。
「あの団体ってなんだったの?おかしいじゃん、こいつのラブレター初っ端見つけたり、ゲームでも追いかけまくってきたし、普通じゃねぇよ、どう考えても」
「犯罪者の再就職先。弱みを握られているからあの元締めも逆らえない。好き勝手にやってたんじゃなくて、指示に従ってただけ。賢い奴は軒並み卒業して行ったのは、なんとなく事態を察していたからだと思う。ここまでの事実は知らないはずだよ、あんなところに来るのは基本的に末端だから」
「さすが、やんごとなき一族!!言うことが高貴だね」
蠍座の彼がカッとなり卓さんに灰皿を投げつける。卓さんが胸ぐらを掴んで廊下に引き摺り出す。
蠍座の彼はやんごとなき一族と折り合いをつけた。私たちの故郷長野に凱旋する前日にケジメをつけてくれた。それをまた蒸し返すような言い方をする卓さんがいけない。
「ちょっと!!ねえ!!やめなよ!30過ぎた良い大人が!!」
男兄弟のいない私は目の前で取っ組み合いが始まると心が抉られるほど焦ってしまう。
卓さんは昔からケンカが強かった。護衛もいない男社会で戦いながら生き抜いてきた。やんごとなき一族で育った蠍座の彼とは練習と経験が違う。
伏せを強要した姿勢で卓さんは捨て台詞を吐いて蠍座の彼に勝利宣言をした、
「めぐみさんのことテメエみたいなガキがメグちゃんなんて気安く呼ぶな。100年早いんだよ」。
男の子なんて基本的にダセェってマウント取ってるだけで、皆平等にダセェんだなと思った。
かつての団体には闇が入り込んでいた。知らぬ間に大学生が兵隊にされかねない。このこともMT SECONDの課題として新たに加えられた。
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