全学連にとって駒場900番教室は忘れ難き教室として秘密裏に暗号化している。
三島由紀夫先生と学生たちが論争をしたあの現場であり、戦場、東大駒場900番教室。
当時を知るMT公会堂から嘲笑を伴いながら俺たちはさまざまな話を聞かせてもらった。リアルな時代背景と三島由紀夫先生が戦前からの緑の蛇の正体をつかんでいたことを。
「考えてみろよ、いくら今と違って気骨のあるやつらだとしても、国を統治している人間なんて家柄のいい連中ばかり。今のご時世とは比べ物にならないくらいに身分が幅を利かせていた時代なんだ。いっかいの学生連中が本気で自分達の意思で喧嘩なんてできるか?」
最近わかばからメビウスにたばこの銘柄を変更をしたMT公会堂のひとりが苦々しく言う。
「後ろ盾がいたことはたしかに。その通りだと思う」
歴史好きの椿が目を輝かせる。
「あの頃は、ちょっと前にアメリカでベトナム戦争の反戦がヒッピーという文化と共に流行ったんだよ。反戦活動の急先鋒はジョンレノン、奥さんはオノ・ヨーコ。日本人も真似したかったという文化背景はある」
「全学連に参加していた人間たちの風景って今SNSで他人を晒し首にする若者に似ている気がするのよね」
「じゃあ、ケツ持ちがいたってこと?」
「奉祝くん、さすが!鋭いね」
「誰だったの?その正体を三島由紀夫先生がつかんでいたってこと?」
「たぶんね。緑の蛇っていうのは、まあ、ソビエト連邦の何某を意味したんだ。でもソ連が絡んでいたわけではないよ?線を引いて緑の蛇って言っただけだったはずさ。線のつながる先に赤軍派のパトロンがいたからね」
「誰だったの?金持ち?それとも国家転覆を目論む王様?」
MT公会堂が目を見合わせて笑うべきか黙るべきか怒るべきか苦慮した表情を俺たちに見せた。
「まあ、なんていうかね、、、あまりにもバカバカしくて君たち若者にはすごく申し訳なくてね、、、」
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