魔法のランプが落ちていた。擦ってみたら魔神が出るからと恐れて私は彼に声をかけることを拒んでいた。
「だって、怖いじゃない。3つ願いを言わないと帰ってくれないんでしょう?」
一度も擦らない私をみかねて勝手に魔神がお出ましになった時から私の驚きは日に日に薄められていく。
出てきた魔神はそれでも願い事を考えあぐねている私に痺れを切らして、勝手に願いを3つ決めて勝手に叶え始めてしまった。
文句を言った。そんなこと願っていないと。
すると魔神はこう言った「じゃあ僕を消し去るように願えばいいじゃないか!」。
反論できない私は魔神を見上げた。魔神の肩越しに夜空が見えた。外国の夜空のように星が見たこともない雰囲気に感じた。
魔神は私が気づかぬ涙に気づいていたらしい。
魔法のランプに目をやると、ランプの口には蝶々がとまっていた。
船の突先の女神のように。
ああ、そうか、この魔法のランプは私の船出のために用意された戦艦なのだと感じた。
気づくと魔神は私に微笑み「厳密には戦艦じゃない」と最後の願いを勝手に叶えてしまった。
「これは空母だ。戦闘機が搭載されている」
「もう!あなたをランプに返すことができないじゃないの!」
魔神は姿を変えてこう答えた、
「僕をこの船の乗組員にしてほしい。そのために僕は魔神に姿を変えて君に会いにきたんだ」
すべては仕組まれたことだった。
魔神のふりをした彼は、魔法のランプに変装した空母で私の元にやってきた。
そして3つ願いを叶えてやると餌をまけば私が空母に乗り組むと思ったのだが、そこが最大の誤算だったと彼は笑う。
つまり、最初から私と人生を共にするつもりだったらしい。
だから最後の願いは魔法のランプの本性を見せることにしたのかもしれない。
外国への道はあなたに整えられ、私はあなたに近づけた。
すべては仕組まれたあなたのシナリオ通りの恋愛だ。
見事私はあなたの腕とあなたの愛に溺れている。それでもあがき沈まぬようにと私も少しは考えた。
あなたの海に錨を下ろす。もうどこへも行かないわ、どこにもね。
※デスクトップ壁紙サイズです。
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