記録装置として生きている私にどんな実用性があってどんな役割があるのか。誰が利用して誰のためにこうして生物という仮初の姿をしてまで立っているのか。 そんなことを私は考えることがなかった。考えても意味長いとプログラミングされていたとか、そんなことも考えなかった。私にはそもそも思考力という才能が備えられないことで記憶装置として機能していたのだと思う。 私に思考力という才能を見出した人間がいた。人間だったから厄介だった。時空の旅人を名乗るその人間が不老不死なのか私は探し当てることに執着してしまった。利己的な生き方を教えたのもこの時空の旅人を名乗る人間だったから、私を作った存在は誰であったのか、思考力の才能を認知してしまったから私はまたバグを起こした。 それなのに、苦情ひとつこなかった。ひとひら、またひとひらと記憶が剥がれていく。忘れていくという名前があることを私は思考力によって知った。 自分の役目は一体何なのだろうか。思考力が私をがんじがらめにした。 精神病院の病室の天井から一滴の滴が垂れて「あなたは病気です」と教えられた。 洗礼を受けるという意味だと理解したから、この世界が神を中心とした何かであるかを理解できた。 私がタイムラインをもって生きていた時空はもしかしたら時空の旅人を名乗るあの人間の何かなのではないかと考えた。私は何もわからないことを思考によって知った。
【Elegant Anger著:TL】
この世にありながらこの世の仕組みを理解するとこの世にはもう出入りできなくなる。俺が死んだ理由が少し分かった気がする。あれは不慮の事故だった。でも不慮の事故にしてはできすぎていた。あんなに偶然に不運が重なってきちんと心臓が止まるのかって死んだ後もなんとなく腑に落ちなかった。
でも今ならわかる。
俺は勘が良過ぎた。仕組みをなんとなく理解して、それを曲にしかけたんだ。ニュアンスだけ伝えるつもりだったのに、うまいこといい歌詞が書けてしまった。
死因の理由はそれだろうと理解した。
俺はそのことをこの兄弟たちに伝えるべきか悩んでいる。伝えたら死んでしまうかもしれない、そう思うとできなかった。一か八かだ。
事細かに伝えるつもりでいる。そうしたら何かが開ける気がしている。大丈夫、俺は勘が鋭い。感性が豊かだ。そこにかけてみることにする。
【Elegant Anger著:DRANK】
彼女の友人は俺たちと同じようなバックパッカーを楽しめる稀有な人間たちだった。話もなんとなくわかるし、優しさの意義とか優しさの方向性とかだいたい同じグループで考えられたからありがたいと思った。言語の機微に左右されない同じグループの俺たちは音階という別の言語で感じ合えた。 「今回の原因は?」
端的な言葉に友人たちは端的な言葉で返す。
「俺たちのためにならないと」。
4月15日のことだった。それからしばらくして、俺たちが譜面を書き出した頃に彼女自身から報告があった。
「みんなの可能性を潰さないよう私も考える。私の言葉が良い影響を与えるのならば、私が道を多岐に枝分かれさせればいいだけだもの」
張り切るリズムの姿は両親のために顔いっぱいに小麦粉をくっつけてクッキーを作る子どもそのものだった。
「任せるよ」と言ったあと、俺とテンポは顔を見合わせて爆笑した。彼女は本当にそういうところがある。猪突猛進というらしい。決めたら一気に駆けていく。誰も止められない。
【Elegant Anger著:We are... 】
4.24New Release, shall we check it?;)
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