金曜恒例、MTGの日がやってきた。ある程度の議題はあるものの、何よりも大きな議題は芍薬先生のスケジュールだろう。
芍薬先生は脚本家である。脚本家が動かなければ、私たちは指示を出すことさえできない。何より都合が悪いのは芍薬先生が本当につまらないことをいちいち気にしてしまう性格であるところだ。
(親が甘やかしたからだと思う。本当にひとりっこはダメだと芍薬先生を見ていると思う。)
今や芍薬先生の脚本は全世界に至っている。1日の遅延でどれだけ多くの方々から最速の電話メールがオフィスに来るか、、、通信がパンクしてしまうことは日常茶飯事だし、人員が足りなくてLAY-RONの友人たちに頼み込むことさえある。
また、芍薬先生についてこのブログでかなりの分量を割いて掲載しているのはMT SECONDにおいて先生だけが表の顔を持っていないからである。表のSNSを持たない芍薬先生の動向を世界中が知りたがり、「今、椿は元気なのか?」「椿は何をしている?」というメッセージが運営各々に毎日数百件から寄せられる時があった。
見かねたMT SECONDのメンバーが通信整備をしてくれたため今は催促のホットラインも激減して大変ありがたく思っているのだが、変に勘の良い先生は昨日「私がひとりでいたいときに電話をかけてきても無駄だよ。メールも見ないから」と臍を曲げてしまった。
焦った、というよりも、肝が冷えた。
先生はよく言えば繊細だ。誰が自分のことをどう思っているのかと、体の傾き、目の動き、声の抑揚だけで感じ取る。だからたとえば、このオフィスの近くに芍薬先生の天敵が来ていたとしたらそれを正確に感じ取ってしまい、メンタルダウンを起こす。
休ませてあげたい気持ちはもちろんあるけれど、そうもいかない。
だから一度だけ進言したことがあった「もうこの際、表に出たらどうだ?」と。祈祷が説き伏せてくれるかと思って頼んだ。先生の思いは頑なだった。
「私が表に出てしまっては要塞の意味がなくなる。どんなに窮地に立たされても、どんなに疑われても私が表に出たらこのMT SECONDは成り立たない?バカなの?頭使ってる?」
(先生、その「バカなの?」って口癖、そろそろやめませんか?私たちきついっす、、、)
「このオフィスで私は大切にされている。実感をもって感謝しているよ。それでいいの、いつもありがとう」
肝心なところで盛大に勘違いするから先生は底知れない。先生のことを心配したのではなくて、私たちの連絡事項が増えて仕事が増えるから表に出てほしいと言ったのに、自分の立場が疑われて3年前と変わらず馬鹿にされたままであることを心配されたと思ったらしい。
(先生、バカなの?)
先生の動向は世界中のセレブが知りたがっている。というよりも、逐一知らせないと毎日毎日電話とメールに終わりが来ない。時差というものが憎らしいくらいに24時間問い合わせが来る。日本のセレブと違ってエージェントやら何やらがわんさかいるものだから、チーフクリエイターだとかヘアメイクチームの統括マネージャーだとか、あの手この手で連絡が来る。
芍薬先生が直接連絡をとっているのはelegant angerの4人だけ。彼らが海外セレブの調整役をしてくれたらいいのだけれど、彼ら曰く「僕たち暇じゃないし、そういう事務の仕事はしたことないし、契約のことなら専門家がいるからその人通してくれる?」。
(ウソつけ、暇だろうが。毎日サーフィンしかしてないってネットに書いてあったわ、、、)
兎にも角にも、先生のスケジュールが今日の1番の議題になるはずだ。
elegant angerサイドの事務方に愚痴ってみたら、思いがけず共感してもらえて私はそれを糧に午後の仕事を頑張れそうだ。
「きっと彼らクリエイターは暇じゃないという事実をクリエイトしているのさ。脳内で毎秒物語を作っているんだとしたら、僕たちより忙しいということもできるからね。あらゆることがクリエイティブなんだよ」。
向こうの事務方とはズームでもいいから一度飲み会をしたいと思う。事務の苦労は事務がわかる。そういうものだ。
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