父母がいて娘たちが生まれた。
誰が箱の中に閉じ込めたのか。時代を閉じ込めるとはどうして必要だったのか。
疑問が渦巻くことがなかった。それさえも箱の中に閉じ込められてしまったからだ。
姉よりも少しだけ色の黒い妹は海の近くに住もうと試み、妹よりも少しだけ色の白い姉は山に住もうと試みた。
母の血筋を引く姉が父の元に住みたがり、父の血筋を引く妹が母の元に住むたがった。
言葉をせずとも教えられずともすべきことを心得て互いに譲り合い動けるこの姉妹に対して恐怖を感じたのは何者だったのか。
母は人魚であった。漁村にある小さな借家にかくまわれたことにも理由がある。犬鷲となった彼であればどこからでも彼女を見つけてしまう。
魚はさばかれる。活き造りにだってできる。笑えない牽制方法だった。
【芍薬椿著:箱の中のオリンポス】
感情の混じりがグラデーション。グラデーションなしに感情を語ることはできない。エデンとは人間が想像する以上にシンプルで、想像する以上に複雑怪奇な園だ。アダムとエバが住んでいたエデンを楽園と称して、すべてがそろえられた極上の桃源郷だと夢見る人間にとって、エデンへの到達の旅路は見るに堪えないかもしれない。
神がエデンで何を望まれ、アダムとエバを創造したのか。今も神は人間がエデンの園に来られることを待ち望んでおられる。到達にはグラデーションという感情の規則性を知り、その規則性の外にある神の試みを災いだと曲解しない力が必要となる。
神は望まれる、私たちがエデンに到達することを。
【芍薬椿著:エデンへの到達】
一(はじめ)が生まれて1年が経過した。お誕生日パーティをしようとする頃に、私は極限を迎えていた。夫も私も一(はじめ)の名前に込めた信念を忘れていた。一(はじめ)は毎日泣いていた。生まれてきた彼を見て私は感動することができなかった。それもまた私を悩ませた。泣いてばかりいて私の睡眠時間は削られ、感動的だと思い込んでいた子供の誕生も持続して可愛いと思うことができなかった。自分はやはり感情のない親に育てられたのだと親を恨んだ。
ママ友ができた。彼女に相談するとこんな言われ方をした。
「あなたは恨むべき親がいていいわね。私の両親はそれはそれは私を可愛がって育てたの。私の目からも完璧な親でいまもなお感謝している。だからね、私が生まれたての我が子を可愛くないって思った時誰のせいにもできなかったのよ」。
涙を流すこともできない彼女の暗い顔が私に大きな衝撃を与えたことは言うまでもなかった。
【MT公会堂著:うちの子が1番に決まっているだろう!!】
0コメント